換気によるエネルギ放出の考え方



換気を行うということは、空調された空気と、空調されていない空気を入れ替えることである。 このことは、換気することが、せっかくエネルギをかけて作り上げた空気を捨ててしまうことを意味する。 従って、空調された空間での換気量は、必要最低限に抑えるべきである。しかし、部屋の中に汚染源がある場合は、換気によって汚染物質を排出せざるを得ない。しかし、居室中に汚染源があるというのは一体どうなのであろうか?不要な 汚染源は元から絶つのが最良の方法であることは分かりきった事実である。この分かりきった事実に反して換気で対応するとどのようになるのか?以下に、その 計算結果を示す。


空調には大きく分けて、(1)温度を制御する機能、(2)湿度を制御する機能、(3)空気中の粒子を除去する機能の3つの機能がある。産業用では、(3) も(1),(2)と同じくらい重要な場合があるが、一般家庭用では、特に重要なのが(1)と(2)である。通常の家庭用空調機にも、除塵フィルタが付いて いるが、これは目に見えるような大きさの埃をとるの精一杯で、細かな粒子を取ることはできない。これは、空中の粒子を取るというよりも寧ろ、熱交換用の フィンに異物が付着して、熱交換効率を下げるのを防止するのが目的である。また、(2)については、一般家庭用の空調機では湿度と温度を別々に制御できる ものは少なく、湿度を変えようとすると温度も変わってしまうものが殆どであり、単なるストーブの場合に至っては、湿度のコントロールを全く行っていないの で、ここでは、用語としては正確ではないが温度だけを制御するものも含めて空調機として定義しておく。

空調時の空気の質量バランス及び熱バランスを下記に示す。空気量及び熱量の変化は全て1秒あたりとする。

熱及び空気のバランス

(仮定)
空気の密度の変化は、小さいものとし、ここでは無視して概算する。
空気の密度 ρ=1.2kg/m3= 一定
heat-mass-balance
記号
 

変数名
内容
Q_in
[kW] = [kJ/s]
系(部屋)への入熱量(部屋内での発熱量も入熱量とする)
Q_out_general
[kW] = [kJ/s]
部屋の外への放出熱量のうち、壁や窓等を通して出て行くもの(部屋の内外の温度が一定の場合 にはこの値は一定である)
Q_out_air
[kW] = [kJ/s]
部屋の外へ排出する空気によって放出される熱量
F_in_stove
[kg/s]
ガスや灯油等のストーブを焚くことによって消費する酸素と増加する二酸化炭素を補償するため に必要な空気量
F_in_humanbeing
[kg/s]
人の生命を維持するために必要な酸素濃度と二酸化炭素濃度を補償するために必要な空気量
F_in_other
[kg/s]
その他の為に取り入れられる熱量
F_out_stove
[kg/s]
ガスやストーブのために取入れる空気の代わりに押し出される空気量(= F_in_stove)
F_out_humanbeing
[kg/s]
人の生命を維持するために取入れる空気の代わりに押し出される空気量(= F_in_humanbeing)
F_out_other
[kg/s]
その他のために排出する空気量

ここで、次式が成立する。
項目
数式
備考
空気量バランス
F_in = F_out
但し、
F_in = F_in_stove + F_in_hunmanbeing + F_in_other
F_out = F_out_stove + F_out_humanbeing + F_out_other
系内の空気量が一定(部屋の容積が変化しない)
必要な空気量
F_in_stove = 一定

暖房に必要な空気量は一定
正しくは、室内で化石燃料を燃焼させる方式の暖房に必要な空気量は、損失熱量に比例するが、ここでは、問題を簡単にするため このように近似する。
尚、電気機器での暖房の場合、及び、化石燃料を用いた暖房であっても、屋外で燃焼させるタイプのものでは、F_in_stoveがほぼゼロのなるので、こ の近似で差し支えない。
F_in_humanbeing = 一定
人間の生命維持に必要な換気量は一定
熱バランス
Q_in = Q_out
但し、
Q_out = Q_out_general + Q_out_air
部屋の温度が一定とする
排出される空気による排出熱量
Q_out_air = F_out × ρ × CP × (T_room - T_outside)
排出される空気の熱容量と流入する空気の熱容量の差が排出される熱量となる
その他排出される熱量
Q_out_general = A × k × (T_room - T_outside) = 一定
A: 部屋の表面積
k : 比例の定数
室温及び外気温が一定の場合は、その他の排出される熱量は一定
(実際にはこのように単純な式で表される訳ではないが、室内外の温度差が一定という前提の元ではこの仮定は概ね正確である)

以上を前提として、排出される熱量を下記に記す。

項目
数式
通常の排出熱量
Q_out_normal = ρCP(F_in_stove + F_in_humanbeing) + Q_out_general
追加の換気がある場合の排出熱量
Q_out_extra_exhaust = ρCP(F_in_stove + F_in_humanbeing + F_out_other) + Q_out_general
追加の換気による浪費熱量
Q_waste_extra_exhaust = Q_out_extra_exhaust - Q_out_normal
                      = ρCPQ_out_general
但し、
空気の密度        ρ  = 1.2 [kg/m3]
空気の定圧比熱   
CP  = 1 [kJ/kgK]
上記が追加の換気による浪費エネルギとなる。尚、既述したように、空気の密度は一定ではないので、この計算には誤差が伴うが、議論を損ねるような大きな誤 差ではない。

下記に、1秒あたりの浪費エネルギ量[kW]の早見表を示す。

追加の換気による浪費エネルギの早見表

換気による浪費エネルギ[kW]
(換気量↓) (室内外の温度差→)
1[℃]
5[℃]
10[℃]
15[℃]
1[m3/h]
0.000333 [= α]
0.00167
0.00333
0.005
10[m3/h]
0.00333
0.0167
0.0333
0.05
20[m3/h]
0.00667
0.0333
0.0667
0.1
100[m3/h]
0.0333
0.167
0.333
0.5
800[m3/h]
0.267
1.333
2.667
4.0

任意の条件で計算する場合は、次式で計算できる。

浪費エネルギ = α[kW/(℃・m3/h)] ×室内外の温度差[℃] ×追加の換気量[m3/h]

(ワンポイント)
建物内の喫煙所による浪費熱量は、喫煙所の扉を開放した場合のもので、上の表では右下の値となる。但し、扉を閉めきって運用することが可能であれば排気量 を減らせることができる。この場合も、一人あたり、25[m3/h]の追加の換気が必要になるので、精々10%程度の排気量にしか ならないものと考えられる。
因みに、空調のないところ(屋外または、空調のある部屋と繋がっていない空間)に喫煙所を設置する場合は、 エネルギ損失は考慮しなくて良いことからこれが一番勧められる方法である



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